モメチンに必要な道具一式|「いいツールを探す」をやめる。道具が変えるのは勝率ではなく“判断を求められる回数”だから
本記事は情報提供を目的とした個人の見解であり、投資の勧誘・助言ではありません。特定の証券会社・情報サービス・ツールを推奨するものではなく、記載の仕様・数値は執筆時点のものおよび計算上の仮定です。投資判断はご自身の責任でお願いします。
リード
投資を始めると、道具が増えます。
証券口座。チャートアプリ。スクリーナー。ニュースアプリ。株価通知。SNSのリスト。四季報。掲示板。気づくとスマホのホーム画面が投資関連で1ページ埋まっている——という状態に、心当たりはないでしょうか。
私はありました。そして道具を増やしている間、ずっと同じことを考えていました。「まだ足りない道具があるのではないか」。
この記事は「おすすめツール一覧」ではありません。むしろ逆で、道具を選ぶ基準そのものが間違っているという話をします。
計算してみると、価格を見る間隔を1分から1週間に変えても、含み損である確率は49.98%から49.12%までしか動きません。ほとんど何も変わらない。動くのは別のところで、含み損を目にする回数が、年40,407回から24回になります。
道具は勝率を変えません。道具が変えるのは、判断を求められる回数だけです。
結論:道具は「情報を増やす装置」ではなく「決めたことを自分の代わりに実行する装置」
- 情報を増やしても的中率はほぼ変わらないが、自信だけは増える(後半で古典的な実験)
- 価格を見る頻度を上げても確率は動かない。動くのは判断を迫られる回数(自作計算)
- 頻度の高いフィードバックを受けた人ほどリスクを取らず、利益も少なかった——学生実験でもプロトレーダーの実地実験でも同じ結果
- だから道具の選定基準は「何が見られるか」ではなく、「自分がいない時間に、決めた注文を出せるか」
- 道具一式は5つの機能に還元できる。機能で書けば、サービスの仕様が変わっても要件は変わらない
- 持たない道具リストを先に作る。増やすより効く
この記事は 週次ルーティン と 週末20分のスクリーニング手順 を「では何を使ってやるのか」という側から見たものです。手順が先で、道具は後——という順番そのものが、この記事の主張になっています。
第1部:道具を増やすと、増えるのは精度ではなく自信
8人の専門家と、40個の情報
心理学者ポール・スロヴィックが1973年に行った、よく知られた実験があります。
競馬の予想を職業にしている8人のハンディキャッパーを集め、レース結果を伏せたうえで勝ち馬を予想させました。ポイントは情報量の操作です。まず各自が「自分がいちばん重視する5項目」(馬齢、斤量、騎手など)を選び、その5項目だけで予想する。次に10項目、20項目、40項目と、本人が重要だと思う順に情報を足していきます。
結果は次のようになりました。
| 与えた情報 | 的中率 | 本人の自信 |
|---|---|---|
| 5項目 | 約17% | 約19% |
| 40項目 | 約17% | 約34% |
的中率は動かず、自信だけがほぼ2倍になった。 情報を8倍にしても予想は良くならず、「自分は当てられる」という感覚だけが育ちました。
しかも足したのは無関係な情報ではありません。本人が「重要だ」と思う順に足した情報です。それでもこうなります。
道具は「自信の生産装置」になりうる
この実験を投資の道具に置き換えると、居心地の悪い可能性が出てきます。
道具を増やすと、画面に出る情報量が増えます。増えた情報が判断を良くしているのか、それとも判断への自信だけを良くしているのかは、自分では区別できません。区別できないまま、増えた自信で株数が増えます(資金管理 の話に直結します)。
「よく調べたから、いつもより多く買った」——このとき増えていたのが精度なのか自信なのかを、私たちは事後にしか知りません。しかも事後に知る方法も、記録を先に書いていなければ 手に入りません。
道具から手順が決まってしまう問題
もうひとつ、道具を増やすと起きることがあります。
ハンマーしか持っていないと、あらゆるものが釘に見える——という言い回しがあります。道具には「使ってみたくなる」性質があり、使うこと自体がいつのまにか手順になります。
高機能なチャートツールを入れると、そこに付いているインジケーターを使いたくなります。使うために「このインジケーターが点灯したら」という条件が生まれます。するとその条件は、自分の手順から出てきたものではなく、道具に付いていたから出てきたものです。
これは 新高値銘柄の探し方 で書いた構図と同じです。あの記事では「毎晩ランキングを眺める習慣」が、順張りの手順ではなく注意ベース買いの自動化になっていた、という話をしました。今回は対象が画面ではなく道具そのものというだけで、構造は同じです。
手順が先で、道具が後。 逆になると、道具の機能が手順になります。
第2部:道具が変えるのは確率ではなく回数(この記事の核)
見る間隔を変えても、確率はほとんど動かない
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
ある銘柄を持っているとします。期待リターンを年+7%、値動きの大きさ(年率ボラティリティ)を25%と置き、価格がランダムに動くと仮定して、**「ふと画面を開いたとき、買値を下回っている確率」**を、見る間隔ごとに計算してみました。
| 見る間隔 | 含み損である確率 | 1年で見る回数 | 含み損を目にする回数 |
|---|---|---|---|
| 1分ごと | 49.98% | 80,850回 | 約40,400回 |
| 1時間ごと | 49.83% | 1,348回 | 約671回 |
| 1日1回(引け) | 49.60% | 245回 | 約122回 |
| 週1回 | 49.12% | 49回 | 約24回 |
| 月1回 | 48.23% | 12回 | 約6回 |
(立会時間は前場150分+後場180分=1日330分、年245営業日として計算。詳細な条件は sources.md に記載)
左の列を見てください。49.98% → 49.12%。ほとんど動いていません。
右の列を見てください。約40,400回 → 約24回。1,700倍近く違います。
同じ銘柄、同じ期待リターン、同じ値動き。違うのは道具だけ。それでも、「損している」と感じる機会の数は、これだけ変わります。
正直に書いておくべきこと
この計算には自分に不利な性質があります。
期待リターンをもう少し低め(あるいはボラティリティをもっと高め)に置くと、間隔を伸ばすほど含み損の確率がわずかに上がるという逆転が起きます。具体的には、年率ボラティリティを40%にすると1分ごとが50.00%、週1回が50.14%になります。
つまり「長く持てば勝てる」という話ではまったくありません。長く持って有利になるのは、期待リターンが正で、しかも値動きの大きさに対して十分に大きいときだけです。この記事が主張しているのは、確率のほうはどう置いてもほとんど動かないということ、そして回数のほうは道具で1,700倍変わるということ、この2点だけです。
「回数」がなぜ効くのか
回数が増えると何が起きるか。判断の機会が増えます。
そして判断の機会が増えると、早すぎる利確、取り返し売買、恐怖で全部売る といった、これまでの記事で扱ってきた失敗の入口が、その回数だけ開きます。どれも「1回の判断」で起きるものです。
道具が悪さをするのは、間違った情報を出すからではありません。正しい情報を、必要以上の回数出すからです。
第3部:頻度を上げた人ほど成績が悪かった、という実験
第2部は計算でした。ここからは実験です。
学生84名の実験——手を縛られた群のほうが儲けた
Gneezy と Potters が1997年に発表した実験があります(QJE 112(2))。ティルブルフ大学の学生84名を2群に分け、12ラウンドのくじに毎回いくら賭けるかを選ばせました。くじは「2/3の確率で賭け金を失い、1/3の確率で賭け金の2.5倍を得る」——期待値はプラスですが、負ける確率のほうが高い設定です。
- H群(高頻度):1ラウンドごとに結果を見て、1ラウンドごとに賭け金を変えられる
- L群(低頻度):3ラウンドまとめて賭け金を決め、3ラウンド分の合計結果しか見られない
賭けた金額の平均(元手に対する比率、1〜9ラウンド)はこうなりました。
| H群(毎回見る) | L群(3回まとめて) | |
|---|---|---|
| 賭けた比率 | 50.5% | 67.4% |
| 最終的な総収益 | 1,822セント | 2,134セント |
差は統計的に有意でした(比率 p=0.002、総収益 p=0.038)。情報が少なく、選択の自由も少なかった群のほうが、リスクを取り、実際に多く稼いだわけです。
論文自身が結論部でこう書いています。投資家に調整の自由を与えないこと(原文では「手を縛る」)は、結果をまとめて評価させることにつながり、たまの後退で降りてしまう誘惑に抵抗する助けになりうる、と。
これは道具の話として読めます。手を縛る道具のほうが良い道具でありうる。
プロのFXトレーダー、価格86万件の実地実験
とはいえ学生の1時間の実験です。プロなら違うのではないか——という反論に答える研究があります。
Larson・List・Metcalfe (2016, NBER WP 22605) は、新しい取引プラットフォームのβテストという体裁で、世界中の現役プロFXトレーダーを対象に自然実地実験を行いました。参加者は自分が研究対象だと知りません。2週間・10営業日、864,000件の分単位の価格が使われています。
- Frequent群:価格を1秒ごとに見られる
- Infrequent群:価格を4時間ごとにしか見られない
実際に見た価格の数は、Frequent群が平均約1,555回、Infrequent群が平均約14回でした。
結果(実験期間の最後の20%):
| Frequent群(秒単位) | Infrequent群(4時間ごと) | |
|---|---|---|
| 危険資産への配分 | 27.4% | 36.4% |
| 平均利益 | 401,634 | 615,715 |
利益の差は50%超。ランダム化のマッチドペアに限ると81%差でした。しかも上位でも下位でも同じ向きで、Frequent群の下位25%は損を出していたのに、同じ位置のInfrequent群は利益を出していました。
さらに重要なのは、取引経験年数が長くても、この効果はほとんど打ち消されなかったことです。論文はこう締めています——個人も投資家もトレーダーも、タイムリーな情報と判断の自由をみな欲しがるが、そうすることで自分を害している、と。
この2つを鵜呑みにしないための留保
- 学生実験はくじであって株ではありません。1時間で終わります
- 実地実験はFXの、しかも特殊な設計のファンドであり、日本の個別株スイングではありません。加えて論文自身が「1週間だけ異常に高いリターンが出た期間があり、結果の解釈には注意が要る」と書いています
- 両方とも「頻度」を実験的に操作しています。現実の私たちは、頻度を自分で選んでいます。頻繁に見たがる人がもともと成績の悪い人である可能性を、この2つの研究は否定しますが(ランダム化しているので)、私たち自身の生活では区別がつきません
それでも、方向は一貫しています。見る回数を減らす設計は、少なくとも不利ではない。
第4部:では道具は何のためにあるのか=執行
情報を増やすためでないなら、道具は何のためにあるのか。
答えは デイトレとスイング、兼業はどっち? で書いたことの延長です。兼業の強みは、判断と執行を分離できることにあります。夜に落ち着いて考え、その決定を、自分が会議に出ている9時から15時半のあいだに機械が実行する。
つまり道具の第一の役割は、自分がいない時間に、決めたことを実行することです。
逆指値は「取引所の注文」ではない
ここで実務上、意外と知られていない事実があります。
東京証券取引所に出せる注文は、基本的に成行と指値です。逆指値は取引所の注文種別ではありません。証券会社のシステムが市場価格を監視していて、条件に達した瞬間に成行や指値を取引所へ発注する——という仕組みです。
このことから、実務的な注意点が3つ出てきます。いずれも一次仕様に書かれています。
① 注文を出した時点より前の価格は見てくれない
ある証券会社の説明にはこうあります。逆指値注文システムは「お客様からのご注文を受け付けた時点から市場価格と照合を開始」するので、「お客様のご注文より前に成立している市場価格とは照合いたしません」。
つまり、すでに条件を満たしている水準で逆指値を置いても、その時点では発動しません。「800円以下で売り」を、株価が既に790円のときに置いた場合、次に790円以下の約定が起きるまで待つことになります。夜のうちに注文を仕込む週末・夜のルーティンでは、あまり問題になりません。問題になるのは、場中に慌てて置いたときです。
② 執行が保証されているわけではない
エントリー前チェックリスト でも触れましたが、制限値幅(ストップ安)に張り付いて売買が成立しなければ、逆指値は執行されません。東証は基準値段に応じて1日の値動きの幅を制限しており、2営業日連続でストップかつ売買が成立しない等の場合には、翌営業日から値幅を拡大します。
「逆指値を置いたから最悪でも−8%」は、成り立たない場合がある。 道具に任せる範囲を決めるときは、ここを前提に入れておく必要があります。
③ 同じ会社でも、ツールによって出せる注文が違う
これも一次仕様にはっきり書かれています。ある会社の例では、パソコン用の高機能ツールでは米国株の逆指値の発注・訂正ができない、米国株では逆指値付通常注文が出せない、といった制限があります。**「その会社が対応しているか」ではなく「自分が普段開いている画面から出せるか」**が要件です。
夜にスマホから注文を仕込む運用なら、確認すべきはスマホアプリで逆指値が出せるかであって、パソコン用ツールの機能一覧ではありません。
第5部:道具一式を「5つの機能」に還元する
ここまでを踏まえて、道具一式を組み直します。
サービス名は書きません。理由は2つあります。ひとつは特定の事業者を推奨する形になるのを避けるため。もうひとつは、サービスの仕様は変わるが、機能要件は変わらないからです。
そして順番が重要です。既存の手順から逆算します。 手順のほうが先にあり、その手順を実行するために必要な機能だけを持ちます。
| # | 機能 | どの手順のために要るか | 確認する質問 |
|---|---|---|---|
| ① | 約定させる | 損切り価格を先に決めて置く/トレールで更新する | 自分が普段使う画面から、逆指値・IFD・トレール系の注文が出せるか |
| ② | 位置を測る | 週足で方向、日足でタイミング/出来高と移動平均を見る | 週足と日足を同じ銘柄で切り替えられるか。出来高と移動平均が同じ画面に出るか |
| ③ | 候補を絞る | 週末20分のスクリーニング | 条件を保存して、次週そのまま呼び出せるか(毎回入力し直す道具は続かない) |
| ④ | 予定を知る | 決算発表日を避ける/またぎを判断する | 保有銘柄と候補銘柄の決算発表予定日を、まとめて確認できるか |
| ⑤ | 記録する | 月1回の集計 | 約定履歴をCSVで落とせるか(手入力しないこと自体が要件) |
対応する記事はそれぞれ、①が 損切りライン と トレーリングストップ、②が マルチタイムフレーム・出来高の読み方・移動平均線、③が 52週高値スクリーニングの具体的条件、④が 決算モメンタム、⑤が トレード記録 です。
④について:決算発表予定日は無料で手に入る
意外と知られていませんが、決算発表予定会社の一覧は、日本取引所グループがExcelファイルで無料公開しています。毎営業日17時頃に翌営業日分が更新されます。
ただし、JPX自身がこう注記しています。掲載されていない会社が発表を行うことがあり、掲載されている会社も予定変更で日程が変わることがある、と。これは有料ツールを使っても同じです。予定は動くものとして扱うほかありません。
⑤について:手で書かない部分を決める
約定履歴のCSVダウンロードは、多くのネット証券が備えている機能です。会社によって照会できる期間や1回あたりの件数上限が違うので、そこだけ確認すれば十分です。
トレード記録の記事 で書いたとおり、手で書くのは「買う前の60秒」だけにします。約定値・株数・手数料を手で写している人は、道具の使い方ではなく、手順の設計で損をしています。
コピー用:道具の機能チェック
□ ① 普段開く画面から逆指値が出せる
□ ① 逆指値の条件は「注文を出した後」の値動きから照合される、と理解している
□ ② 同じ銘柄で週足と日足を切り替えられる
□ ② 出来高と移動平均が同じチャートに出る
□ ③ スクリーニング条件を保存して呼び出せる
□ ④ 決算発表予定日をまとめて確認できる
□ ⑤ 約定履歴をCSVで落とせる
上の7つが埋まっていれば、道具は足りている。
足りていないのは、たいてい道具ではなく手順のほう。
7項目です。これ以上は要りません。
第6部:持たない道具リスト(引き算のほう)
第2部の結論が正しければ、道具選びで効くのは足し算より引き算です。以下は「持たない」というより、置き場所を変えるという話です。
① 価格のプッシュ通知
これがいちばん効きます。通知は、第2部の「見る回数」を、自分の意思とは無関係に増やす仕組みです。しかも通知が来るのは「大きく動いたとき」——つまり 注意ベース買い の引き金がいちばん強く引かれるタイミングです。
例外は逆指値が約定した通知だけです。これは判断を求めるものではなく、判断が実行された報告なので、性質が違います。
② 常時表示のリアルタイム株価
週次ルーティン の「場中は見ない」を、根性ではなく設定で実現する部分です。ウィジェットを外す、ブックマークバーから外す、アプリをホーム画面の2ページ目に置く。これだけで回数はかなり落ちます。
③ SNSのタイムラインを銘柄探しに使うこと
情報源として否定はしません。ただ、タイムラインは時系列で流れてくるので、構造として「いま目立っているもの」しか出せません。第1部の話でいえば、これは自信を増やす側の道具です。
④ 3つ以上のインジケーター
移動平均線の記事 と マルチタイムフレームの記事 で繰り返し書いたことですが、指標を足していいのは、別の質問を割り当てられるときだけです。同じ「勢いがあるか」という質問に3つの指標で答えても、答えが3つに増えるだけで、判断は良くなりません。
⑤ 2つ目のスクリーナー
1つ目で候補が出なかった週に2つ目を開くのは、条件を緩めているのと同じです。候補ゼロの週があっていい、というのがあの記事の結論でした。
第7部:仕様は変わる。だから見直しは四半期に1回
証券会社の注文機能も、無料ツールの画面も、手数料も、更新されます。この記事に書いた仕様も、読まれている時点では変わっているかもしれません。
だからこの記事は「何を使うか」ではなく「何を確認するか」で書きました。確認そのものは、自分でやる必要があります。
そのうえで、見直しの頻度は四半期に1回にすることを提案します。理由は 週末20分のスクリーニング で条件変更を四半期に1回にしたのと同じです。
道具を変えると、たいてい直後は調子がよく見えます。新しい画面は目に留まりやすく、新しい条件は最初のうち当たったように見えます。変更のたびに「良く見えるもの」を選び直していると、実力とは無関係に「効く道具」が見つかってしまいます。
四半期に1回、次の3つだけ確認します。
- 第5部の7項目のうち、仕様変更で使えなくなったものはないか
- 前の四半期に一度も開かなかった道具はないか(あれば外す)
- 手で入力している作業が残っていないか
3つとも「増やす」方向の質問がないことに注意してください。意図的です。
それでも道具を増やしていい場面
対称に扱っておきます。次の場合は、増やすほうが正しいと思います。
- 手順のほうが先に増えたとき。 新しい判断基準を採用して、それを測る手段が手元にないなら、道具が足りていません。この順番なら健全です
- 手で入力している作業があるとき。 自動化は「情報を増やす」ではなく「回数を減らす」側の変更です
- 執行が自分に依存しているとき。 場中に自分でクリックしないと損切りできない状態なら、それは道具の不足です。第4部の①が最優先
- 記録が集計できない形で溜まっているとき。 集計できない記録は、記録ではありません
共通しているのは、どれも「見る量」ではなく「手を動かす量」を減らす方向だということです。
正直に書いておく留保
-
スロヴィックの競馬実験は1973年の研究で、私は原典そのものではなく広く引用されている記述を通じて参照しています。 被験者は8名と少なく、対象は競馬です。借りているのは数値そのものではなく、「情報量と自信は連動するが、情報量と精度は必ずしも連動しない」という枠組みです
-
第2部の計算は、価格がランダムに動くという強い仮定に立っています。 現実の株価にはトレンドがあり、それがなければこのブログの前提(なぜ順張りは機能するのか)自体が崩れます。この計算が示せるのは「回数のほうが確率よりはるかに大きく動く」という比較の向きであって、水準ではありません
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本文中に書いたとおり、パラメータの置き方によっては「間隔を伸ばすほど含み損確率が上がる」という逆転が起きます。 「長く持てば有利」という主張はしていません
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Gneezy-Potters は1997年・学生84名・1時間の実験、Larson らは2016年・プロFXトレーダー・2週間の実験です。どちらも日本の個別株スイングではありません。またLarson らの研究は査読前のワーキングペーパーで、論文自身が「1期間だけ異常に高いリターンが出た」と注意を促しています
-
証券会社の仕様は変わります。 本文の逆指値の説明は、ある1社の公開仕様に基づく例示であり、すべての会社に当てはまるものではありません。第7部に書いたとおり、ご自身の口座の一次情報でご確認ください
-
「7項目で十分」という数字に、統計的な根拠はありません。 既存記事の手順から必要な機能を数えた結果であり、手順が違えば必要な機能も変わります
まとめ
- 情報を増やしても的中率は動かず、自信だけが約2倍になった(8人の専門家、5項目→40項目)
- 見る間隔を1分から週1回に変えても、含み損である確率は49.98%→49.12%しか動かない。動くのは回数で、年約40,400回→約24回
- 道具は勝率を変えない。判断を求められる回数を変える
- 学生実験でもプロトレーダーの実地実験でも、頻度の低い群のほうがリスクを取り、利益も多かった(50.5% vs 67.4%/利益50%超差)
- だから道具の役割は「情報を増やす」ではなく、自分がいない時間に決めたことを実行すること
- 逆指値は取引所の注文種別ではない。注文を出した後の値動きからしか照合されず、値幅制限では執行されず、画面によって出せる注文が違う
- 道具一式は5つの機能・7項目に還元できる。機能で書けば仕様変更に耐える
- 効くのは足し算より引き算。最優先は価格のプッシュ通知を切ること
- 見直しは四半期に1回。増やす方向の質問はリストに入れない
道具を探している時間は、探している感じがして気持ちがいいものです。私もそうでした。ただ、探して見つかるのは、たいてい自信のほうでした。
手順が先で、道具が後。順番を戻すだけで、たぶん半分くらいは消えます。
次の一歩
次に読む:メンタルを崩さない週次ルーティン(記事040)/新高値銘柄の探し方(記事042)/トレード記録のつけ方(記事037)/デイトレとスイング、兼業はどっち?(記事031)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・売却・保有を推奨・勧誘するものではありません。また、投資助言を行うものでもありません。本記事の内容は執筆時点の情報・筆者個人の見解に基づくものであり、正確性・完全性を保証するものではありません。記載の証券会社の注文仕様・ツールの機能・取引所の制度は執筆時点のものであり、その後変更されている可能性があります。特定の証券会社・情報サービス・ツールを推奨するものではなく、ご利用にあたっては必ず各社の最新の公式情報をご確認ください。投資には元本割れを含むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と判断において行ってください。本記事の情報を利用して生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いません。過去の実績や調査結果は、将来の成果を保証するものではありません。