マルチタイムフレーム分析のやり方|週足で「方向」、日足で「売買」。役割を交換すると両方壊れる

本記事は情報提供を目的とした個人の見解であり、投資の勧誘・助言ではありません。特定の銘柄・手法・時間軸を推奨するものではなく、記載の検証は過去データに対する計算上の仮定です。投資判断はご自身の責任でお願いします。

リード

週足を開くと、きれいな上昇トレンドに見えます。

日足を開くと、直近は下げています。

どっちを信じればいいのか——この問いに答えを出そうとして、私は長いこと時間を無駄にしました。そして、問い自体が間違っていました。

週足と日足は、同じものを拡大縮小したものではありません。性質の違うものを見ています。 だから「どちらが正しいか」を決めようとすると、答えが出ません。

この記事で扱うのは、勝つ側の時間軸を選ぶ方法ではなく、2つの足に別々の仕事を割り当てる方法です。そして後半では、2024年7〜8月の日経平均 を週足で組み直して、上位足に執行を任せると何が起きるかを実データで確認します。


結論:上位足は「方向」、執行足は「タイミング」

  • 時間軸を変えると、統計の符号が変わります。 同じ「過去のリターンで銘柄を並べる」作業でも、6〜12か月で並べると順張りが効き、1週間〜1か月で並べると逆張りが効くというのが古くから知られた事実です(仕手株・急騰株の記事 で扱いました)。同じ現象を拡大縮小しているのではなく、別の現象を見ているのです。だから1本の足で全部を処理しようとすると無理が出ます。
  • 兼業なら「週足+日足」の2つで足ります。 週足は週に1回しか更新されません。これは 週次ルーティン の週末60分と完全に噛み合います。日足より短い足は、兼業では執行できません
  • 役割は固定します。上位足=入っていい方向か。執行足=いつ入り、いつ降りるか。 交換してはいけません。
  • 実際に交換するとこうなります。 2024年7月11日の高値で買ったと仮定して、週足13週線割れで降りると7月26日に−10.79%日足25日線割れで降りると7月22日に−6.22%差は4.6ポイントです。これが「上位足に撤退判定をさせたコスト」です。
  • ただし週足が無能だったわけではありません。 週足13週線は7月12日時点で**+6.00%、線の向きも上——「買っていい方向だ」という判断としては正しかった**。そして週足のルールでも、8月5日の−25.5%は回避できています。上位足は遅いのであって、間違っていたのではありません。

正直な留保をひとつ。この検証は1つの指数の1局面です。 週足が常に4.6ポイント遅いという話ではありません。示せるのは「上位足で執行判定をすると遅れる方向に働く」という構造だけです。


第1部:なぜ時間軸を分ける必要があるのか

拡大縮小ではない、という話

チャートの時間軸を切り替えると、形が似て見えることがあります。ここから「相場はフラクタルだ(どの縮尺でも同じ)」という説明がよくされます。

見た目の話としてはそのとおりですが、統計の中身は同じではありません。

仕手株・急騰株に飛び乗って焼かれる仕組み で扱ったとおり、事実関係はこうなっています。

並べる期間その後どうなりやすいか呼び名
1日〜1週間反転しやすい短期リバーサル
1か月反転しやすい短期リバーサル
6〜12か月継続しやすいモメンタム

同じ「過去のリターンで並べて上位を買う」という作業なのに、期間によって結果の符号が逆になります。

だから、こうなります。

週足が「上」と言い、日足が「下」と言っているとき、2つは矛盾していません。違うことを言っているだけです。

週足は「6か月〜1年の流れ」を、日足は「数日〜数週間の位置」を表示しています。片方が嘘をついているのではなく、質問が違う。

時間軸によって、見ている現象が違う

1本の足で全部やろうとすると何が起きるか

日足だけで運用すると、次の2つを同じ道具で判断することになります。

  1. そもそもこの銘柄は上向きの流れの中にいるのか(方向)
  2. 今日、買うのか/降りるのか(タイミング)

日足の25日線は、②には使えますが①には短すぎます。かといって日足に200日線を引くと、今度は②に対して鈍すぎます。1本の足に2つの仕事をさせると、どちらかが必ず犠牲になります。


第2部:どの2つを選ぶか

期間の対応表

まず、日足と週足の期間がどう対応するかを押さえます。1週間=5営業日、1か月≒21営業日として計算すると、こうなります。

日足週足おおよその期間このブログでの位置づけ
5日1週約1週間短すぎる(ノイズ)
25日5週約1.2か月日足の主力
65日13週約3か月週足の主力
130日26週約6か月大きな流れ
250日52週約1年52週高値 と同じ

ここで気づいてほしいのは、日足25日線と週足5週線は、ほぼ同じものを見ているということです。週足に5週線を引いても、上位足を足したことにはなりません。同じ質問を2回しているだけです。

上位足として意味があるのは、13週(約3か月)以上です。

実務でよく言われる「4〜6倍」

時間軸を選ぶとき、実務では上位足は執行足の4〜6倍の期間にするという経験則がよく使われます。日足に対する週足はちょうど5倍(1週=5営業日)で、この範囲に収まります。

正直に書いておくと、この「4〜6倍」に学術的な裏づけを私は見つけられていません。 実務書やトレーダーの経験則として広く共有されている数字です。理屈としては「近すぎると同じことを2回見る、離れすぎると上位足がほとんど動かず判断材料にならない」という説明がされますが、4倍と6倍のどちらが良いかを比べた検証を私は知りません。

日本株の兼業スイングなら、週足+日足を選べば自動的にこの範囲に入るので、悩む必要はありません。

兼業に週足が構造的に合う理由

週足を上位足にする理由は、期間の妥当性だけではありません。

週足は、週に1回しか確定しません。

これは 週次ルーティン の設計と完全に一致します。週末に方向を確認し、平日は執行だけ——という形にすると、上位足の判断が平日に発生しません

逆に上位足を日足にして執行足を1時間足にすると、方向判断が毎日発生します。兼業では回りません。


第3部:役割分担(この記事の本題)

役割を、はっきり固定します。

週足(上位足)日足(執行足)
答える質問入っていい方向か?いつ入り、いつ降りるか?
見るもの13週線の位置と向き、52週高値との距離25日線、押し安値、ブレイク水準、逆指値
確認頻度週1回(週末)週2回(平日夜)
出す答え「買っていい/見送り」の2択具体的な価格
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そして、この記事でいちばん言いたいのはここです。

上位足に「降りる判断」をさせてはいけません。上位足は遅いからです。 執行足に「方向の判断」をさせてはいけません。執行足はよく向きを変えるからです。

役割を交換すると、両方が壊れます。次の第4部で、片方を実データで確認します。


第4部:2024年7〜8月を週足で見ると、どうだったか

史上最高値を買った後に起きたこと では、2024年7月11日の終値42,224.02円で買ったと仮定して、日足のルールがどこで降ろしたかを検証しました。今回は同じ場面を週足で組み直します。

日足の終値から週足(各週の最終営業日の終値)を作り、13週移動平均を計算しました。

週足はこう見えていた

週末週足終値13週線乖離判定
6/2839,583.0838,583.33+2.59%
7/540,912.3738,731.05+5.63%
7/1241,190.6838,859.29+6.00%
7/1940,063.7939,089.71+2.49%
7/2637,667.4139,069.14−3.59%★下回り
8/235,909.7038,890.19−7.66%
8/935,025.0038,643.72−9.36%
8/1638,062.6738,587.97−1.36%
8/3038,647.7538,578.59+0.18%

7月11日を含む週(7/12終値)の時点で、週足13週線からの乖離は+6.00%、線の向きも上でした。

つまり週足は、こう言っていたことになります。

「上向きの流れの中にいる。買っていい方向だ。」

そしてこれは間違っていませんでした。 8月末には13週線の上に戻っています。1年を通して見れば、日経平均はその後さらに上昇していきました。

週足に「降りる判断」をさせるとどうなるか

問題は、週足を撤退の判定に使った場合です。

何で降りたか撤退日撤退時の値7/11比
日足 高値から−5%トレーリング7/1940,063.79−5.12%
日足 25日線割れ7/2239,599.00−6.22%
日足 −8%損切り7/2537,869.51−8.0〜−10.31%
週足 13週線割れ7/2637,667.41−10.79%
何もしない31,458.42(8/5)−25.50%

週足は間違っていない。ただ遅い

週足13週線割れ(−10.79%)は、日足25日線割れ(−6.22%)より4.6ポイント遅い。

理由は単純で、週足は金曜の引けまで確定しないからです。日足なら火曜に判定できることが、週足では金曜まで待つことになります。しかも13週という期間そのものが、25日より鈍い。

ちなみに週足に5週線(=日足25日線とほぼ同じ)を引くと、7/19に−0.01%とほぼタッチし、7/26に−5.56%でした。週足で見ている限り、日足25日線相当のシグナルも1週間遅れて届くということです。

それでも週足は「無能」ではない

公平のために書いておくと、週足13週線割れで降りていれば、8月5日の−25.5%は回避できていました。 7月26日に−10.79%で終わっています。

つまり週足は、

  • 方向の判断としては正しかった(+6.00%、上向き)
  • 撤退の判定としては遅かった(−10.79%)

遅いことと、間違っていることは違います。 上位足に撤退を任せるのが悪いのは、上位足が役に立たないからではなく、その仕事に向いていないからです。

検証の条件(正直に)

  • 週足は各週の最終営業日の終値から組み直したものです。週足の高値・安値は使っていません(元データが日足終値のため)。実際のチャートの週足ローソクとは、ヒゲの部分が一致しません。
  • 判定はすべて終値ベースで、手数料・税金・実際の約定価格を反映していません。
  • 1つの指数の1局面です。 他の局面では、日足で降りたせいで大きなトレンドを取り逃し、週足で持ち続けたほうが良かった、という結果になることは普通にあります。

第5部:週足と日足が食い違ったときの判断表

役割を分けると、迷いが「4通りの分岐」に整理されます。

週足×日足の4象限

週足(方向)日足(位置)どうするか関連
通常運転。新高値ブレイク の型で入る004, 012
押し目の候補。ただし日足の降りる条件は守る(拾いに行かない)019 押し目買い
見送り。ここがいちばん危ない010 だまし, 039
何もしない。現金でいる036 現金比率

「週足↓・日足↑」がいちばん危ない理由

4象限のうち、週足が下を向いているのに日足が上がっている場面が最も注意を要します。

これは典型的には、下降トレンドの中の戻り(リバウンド)です。日足だけを見ていると、新高値ブレイク と同じ形に見えることがあります。上位足を見ていない人にだけ、買いシグナルに見える。

だましを回避する4条件 の条件③「上位足と方向が一致しているか」は、まさにこの象限を除外するための条件でした。この記事は、その条件③の実装編にあたります。

「週足↑・日足↓」で拾いに行かない

もう一つ注意が要るのが左下です。週足が上向きなので「押し目だ」と考えたくなりますが、週足が上向きであることは、日足の下げが止まる保証にはなりません。

2024年7月がまさにこれでした。7月12日の週足は+6.00%で明確に上向き。日足は下げ始めていた。ここで「週足が上だから大丈夫」と日足の降りる条件を無視した人が、8月5日まで持つことになります。

上位足が上向きでも、日足の損切りラインは免除されません。

これが「役割を交換しない」ということの、いちばん実践的な意味です。


第6部:3つ目の時間軸を足したくなったら

月足も見るべきでしょうか。1時間足はどうでしょうか。

足を増やすと、欲しい答えが必ず見つかる

単純な計算をしてみます。仮に各時間軸が「上」「下」を五分五分で示すとして、少なくとも1つが「上」を示す確率はこうなります。

見る時間軸の数少なくとも1つが「上」
1つ50%
2つ75%
3つ87.5%

これは各時間軸が独立だと仮定した場合の計算で、実際の時間軸は互いに相関しているのでこれより低くなります。 ただ方向は変わりません。見る足を増やすほど、自分が出したい結論を支持してくれる足が見つかりやすくなります。

買いたい気分のときに月足を開いて「長期では上昇トレンドだ」と確認する——これは分析ではなく、確証バイアスの餌です。トレード記録 で扱った後知恵バイアスと、系統としては同じ問題です。

エルダーの三重スクリーンは3つ使うが

とはいえ、有名な手法には3つの時間軸を使うものがあります。アレキサンダー・エルダーが1986年に Futures 誌で発表した三重スクリーンです。

ただ、中身を見ると3つの画面にはそれぞれ別の仕事が割り当てられています。

画面呼び名仕事
第1(上位足)潮(tide)トレンドの方向を決める
第2(中位足)波(wave)オシレーターで押し・戻りを探す
第3(下位足)さざ波(ripple)具体的なエントリーの引き金

同じ質問を3回しているのではありません。 3つの違う質問に、3つの足で答えている。

なので判断基準はこうなります。

足を足していいのは、その足に「別の質問」を割り当てられるときだけ。 「念のためもう1つ見る」は、足を足す理由になりません。

兼業で週足+日足の2つを勧めるのは、第2の質問(押し・戻りを探す)を、日足の中で25日線と押し安値で処理できるからです(021019)。画面を1つ減らして、その分を平日に触らないことに使う、という設計です。


第7部:週末60分への組み込み方

週次ルーティン の週末60分に、この記事の内容を入れると次のようになります。変更は最初の5分だけです。

配分内容変更点
5分週足で方向を確認(保有銘柄+候補の13週線の位置と向き)← 041で追加
15分スクリーニング(週足が下向きの銘柄は候補から外す)20分→15分
15分除外条件(乖離率・流動性・規制銘柄)変更なし
15分サイズと出口の計算変更なし
10分保有中の点検(日足の降りる条件に触れていないか)変更なし

週足の確認でやることは、銘柄ごとに次の2つだけです。

  1. 終値は13週線の上にあるか(位置)
  2. 13週線は上を向いているか(向き)

両方が「はい」なら候補に残す。どちらかが「いいえ」なら、その週は候補から外す。それだけです。 週足で価格の目標を立てたり、降りる水準を決めたりはしません。それは日足の仕事です。

移動平均線で順張り で「見るのは並び順と向きの2つだけ」と書きましたが、週足ではさらに簡素で構いません。


よくある失敗と注意点

  • 週足に5週線を引いて「上位足を見た」と思う → 日足25日線とほぼ同じものを見ています。上位足として使うなら13週以上です
  • 週足が上向きだから日足の損切りを見送る → 2024年7月がこの形でした。上位足が上でも、日足の出口は免除されません
  • 週足で降りる判断をする → 検証したとおり遅れます(−10.79% vs −6.22%)
  • 日足で方向を判断する → 日足の向きは頻繁に変わります。方向判断のたびに売買していると、売買回数のコストが効いてきます
  • 迷ったときに月足を開く → 迷っているときに足を増やすのは、答えを探しているのではなく同意を探しているサインです
  • 時間軸を増やして「分析した気」になる → 増えるのは情報量ではなく、選べる結論の数です

正直に書いておく留保

① 第4部の検証は1つの指数の1局面です。

「週足は日足より4.6ポイント遅い」という一般則ではありません。示せるのは上位足で執行判定をすると遅れる方向に働くという構造だけです。逆に、日足で降りたせいで大きなトレンドを取り逃す局面も普通にあります。

② 週足は終値だけで組み直しています。

元データが日足終値のため、週足の高値・安値(ヒゲ)は再現していません。実際のチャートとは細部が一致しません。

③ 「4〜6倍」に学術的な根拠を見つけられていません。

実務の経験則として広く共有されている数字ですが、比較検証を私は知りません。本記事で週足+日足を勧める理由は、この経験則よりも週足が週1回しか確定しないという運用上の性質のほうにあります。

④ 13週という数字にも最適性の根拠はありません。

約3か月という期間が、モメンタムが機能するとされる6〜12か月の入口にあたることと、週足で扱いやすいことから選んでいます。26週(約半年)でも同じ設計は成立します。

⑤ これは分析を増やす記事ではありません。

週足を足すことで、候補が減ります。増えるのは判断材料ではなく、除外条件です。分析が増えたと感じるなら、たぶん使い方が逆になっています。


まとめ

  • 週足と日足は、同じものを拡大縮小したものではありません。 期間を変えると統計の符号が変わります(1週間〜1か月は反転しやすく、6〜12か月は継続しやすい)。だから「どちらが正しいか」を決めようとしても答えは出ません。
  • 役割を固定します。上位足=入っていい方向か。執行足=いつ入り、いつ降りるか。
  • 交換するとコストが出ます。 2024年7月11日の高値で買った場合、週足13週線割れでの撤退は7月26日・−10.79%。日足25日線割れなら7月22日・−6.22%。差は4.6ポイントでした。
  • ただし週足は間違っていませんでした。 7月12日時点で13週線から+6.00%、線も上向き。「買っていい方向」という判断としては正しく、週足のルールでも8月5日の−25.5%は避けられています。遅いことと、間違っていることは別です。
  • 足を増やすのは、その足に別の質問を割り当てられるときだけ。 独立と仮定した単純計算でも、3つ見れば87.5%の確率で「上」と言ってくれる足が見つかります。迷ったときに月足を開くのは、分析ではなく同意探しです。

次の一歩

  1. 保有銘柄の週足を開いて、13週線の位置と向きだけを確認する(価格目標は立てない)
  2. 週末60分 の先頭に5分の週足確認を足し、スクリーニングを20分→15分にする
  3. スクリーニング条件に「週足13週線の上/向きが上」を除外条件として1行足す(52週高値スクリーニング
  4. 「週足↓・日足↑」に該当する銘柄が候補に混じっていないか、今週の候補で確認する

免責事項

本記事は情報提供を目的とした個人の見解であり、投資の勧誘・助言ではありません。特定の銘柄・指数・手法・時間軸の売買を推奨・勧誘するものではなく、記載の検証は過去の終値データに対する計算上の仮定であり、手数料・税金・実際の約定価格を反映していません。週足は日足終値から組み直したもので、実際のチャートの週足とは高値・安値が一致しません。検証は1つの指数の1局面に対するものであり、他の銘柄・局面で同じ結果になることを示すものではありません。過去の値動きは将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。


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